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4.1.3 膜構造による電荷分離
(1) 生命システムの概要
光合成反応の最初の過程は、一対の酸化された分子と還元された分子を生成することによって光エネルギーを化学エネルギーに変えるものである。この過程は電子受容体と電子供与体の組み合わせを含む分子構築の上で行われる。この分子構築を反応中心と呼び、これにつながる反応系と色素系を含めて「光化学系」という。
一般の光触媒(化学)反応についても言えることであるが、光触媒特性を阻害する大きな要因として、光励起により生成した電子とホール、すなわち電荷の再結合の問題がある。通常、電荷分離した電子やホールがが酸化還元反応に寄与する。無機的な光触媒が酸化チタンなどの特定の材料に限られているのは、分離した電荷の空間的な保持機能が特定の材料に限定されるためである。生体の光化学系では、「膜構造」の特性を生かして電荷分離を行なっている。

 

(2) 学ぶべき生命の機能
? 光駆動電荷分離
植物には2種類の光化学系があり、光化学反応系I(PSI)、光化学反応系?(PS?)ともに光エネルギーによってチラコイド膜の内面と外面との間で電子を伝達する。PS?では、O2発生複合体の電子供与体に正の電荷が生じ、水から電子を奪ってO2を発生する。クロロフィルからきたストロマ側の電子はPSI側の電子受容体へ移動する。このように膜による電荷分離機能が効率よく働いている。
一方、PSIでは、光エネルギーを利用して電子をふたたびストロマ側へ輸送する。この電子は最終的な電子受容体であるNADP+に伝達される。ここでも膜が電荷分離に重要な役割を果たしている。このように膜構造の機能の非対称性および物質の分離特性を利用している。

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図4−4 膜による電荷の分離システム

 

 

 

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